佐々木ヴァイオリン製作工房 佐々木様

2014年09月22日

何とか2ヶ月続けて「お客様の声」をお届けすることになりました。
今回は、東京の高円寺で佐々木ヴァイオリン製作工房を営まれていらっしゃる佐々木さんにお話を伺いました。

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工房の様子

楽器を製作されている方が、赤外線カメラを使用されているのには驚いたのですが、まずは、このサイトをご覧になっている皆さんが聞きたいと思う、素朴な質問をさせてください。

質問:日本に佐々木製作工房さんのようなヴァイオリン工房は沢山あるのですか?
回答:私の様に個人工房を営んでいる者、ショップで働いている者など形態は様々ですが、私の所属している日本弦楽器製作者協会のヴァイオリン会員だけでも100名ほどいますし、所属していない製作・修理技術者もその数倍はいると思います。さらにアマチュア製作者も、日本全国で数百名は存在すると思います。よく「珍しい職業ですね」と言われますが、職人の中ではけっこうポピュラーな業種と言えるのではないでしょうか?

質問:1丁が完了するまでにどのくらいの日数がかかるのですか?
回答:以前、ドイツのマイスター試験の一つとして「製作楽器のコスト計算」の課題がありました。その時に製作時間などを細かく計った事があるのですが、その時の実作業時間はヴァイオリンを1本作るのに230時間かかりました。しかし実際には接着の乾燥、ニスの乾燥などで連続した作業は出来ませんし、またそれ以外にも修理や、調整の作業依頼の方を多くこなさなければなりませんので、私の場合には現実的に1年以上の時間がかかります。

質問:佐々木さんのヴァイオリン作成技術は、どこで、どのくらいの期間で習得されたのでしょうか?
回答:日本では、日本のヴァイオリン製作の第一人者、無量塔藏六(むらたぞうろく)氏の私塾す「東京ヴァイオリン製作学校」にて、ヴァイオリン製作の技術を学びました。
その後、世界的なヴァイオリン製作者であるヨーゼフ・カントゥーシャ氏の工房に約5年間就職して、勉強しながらドイツ・マイスターの資格を取りました。

質問:ヴァイオリンの材料(原料)は全て日本で調達できるのでしょうか?
回答:国産の木材も使えないわけではありませんが、いわゆる本場の木材とは性質(木材特性)が異なりますので出来上がった楽器の音にも違いが出てしまいます。よって量産楽器以外においては基本的に国産の木材は使いません。現地の楽器専門木材業者の所に直接行って、実際に目で選んで輸入します。

そろそろ赤外線カメラの質問もしたいのですが、
質問:佐々木さんのご使用している赤外線カメラは何にお使いですか?
回答:ヴァイオリンはとても繊細な楽器です。製作においても、完成後の運用においても、熱や湿度の管理はとても重要になります。そこで、それらを管理したり、または実験するために赤外線カメラの導入を考えました。
具体的には、「ケース内部の熱の上昇具合の計測」や「製作・修理時の加温時の熱の分布測定」、「工房や楽器保管場所の環境特性の計測」等です。その他にも「松ヤニの温度と特性の実験」、「ニスの温度測定」実験等も行う予定です。

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ケース内部の温度分布の様子

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修理作業時における、赤外線ヒーターランプでの加温

質問:ご使用の赤外線カメラは何ですか?
回答:FLIR T420とオプションのワイドレンズです。

質問:フリアーシステムズ社のカメラを選んだ理由は何ですか?
回答:私は赤外線カメラの専門知識は持ち合わせていませんので、選ぶ上で一番重視したのは「世界的な信頼性」でした。それと、比較的低価格でオプションレンズを交換できるというのも、私にとっては重要な要素でした。

質問:ヴァイオリンを作る工程において温度管理は重要な要素になるのでしょうか?
回答:先にも書きましたように、とても重要です。なぜならばヴァイオリンの板厚は場所にもよりますが、わずか2~5mm弱程度ととても薄いからです。そしてそのような薄くて軽い構造体の楽器に、20kg重以上もの弦の張力がかけられているのです。また、表面に薄く塗られているニスも熱に弱いのです。
ちょっとした温度管理の間違いで、楽器はあっという間に傷み壊れてしまいます。逆に、適切なメンテナンスと管理で維持すれば、300年以上も現役で使う事さえ可能な楽器なのです。

質問:実際に使用して良かったことは何ですか?(メリット)
回答:私だけでなく、全ての技術者は上記のような「温度管理」を感覚的に想像しながら(感で)行っています。しかし、FLIR T420を導入した事により、温度を感覚的にではなく視覚的に捉えることが出来るようになったということです。視覚的な情報は「記録」したり「記憶」したりすることができます。それによってその後、客観的な考察が行えますし、またはお客様に対しても客観的な提示が可能となったのです。

質問:購入して良くなかったことは何ですか?(デメリット)
回答:これは事前にわかってはいたことですが、やはり解像度の低さに関しては「もうひとつ・・」と感じます。

質問:購入されて満足されていますか?
回答:とても満足しています。目に見えなかった「温度」というものを見る事が出来て、そしてさらに記録する事が出来るのは、その後の応用に対して多くの可能性を秘めています。さらに付属のFLIR TOOLも便利です。一旦とりあえず記録しておいて、後でデータの解析が行えるのはとてもよいです。
また先日、初めての校正をお願いしましたが、素早い対応をしていただき、「さすがFLIRシステムズ」と感心しております。

質問:使用方法などの使い勝手はいかがですか?
回答:コンポジット端子から連続して動画撮影をしようとしたときに、「コツッ」と音がしながら定期的に自動校正のために画像がフリーズします。動画撮影時にはこの画像のフリーズが気になります。

質問:何か改善して欲しい点はありますか?
回答:最近のデジカメやビデオカメラからすると、やはり動作が機敏ではありません。設計上厳しいのでしょうが、もう少しきびきび動作する事を希望します。
後は細かい事ですが、撮影保存時に時々「画像が保存されませんでした」という警告が出る事があります。それが一旦出てしまうと、FLIR TOOL上で赤外線画像と普通の画像のペアが崩れてしまっている事があるのです。
また、FLIR TOOLにおいて「画像として保存」が無いようですが、これは私の勘違いでしょうか?

質問:購入前にセミナー等には参加されましたか?
回答:いいえ。

質問:赤外線カメラの購入後に何かセミナーを受講されましたか?
回答:一度受講したいと思っています。

質問:赤外線カメラの購入を考えている方へ先輩から一言ありますか?
回答:私の様な業種では、赤外線カメラの導入が即、利益に繋がるわけではありません。しかし、目に見えない、しかし一番身近な「温度」というものを目で見えるようにする行為には大きなメリットがあります。安い機材ではありませんが、お勧めできます。

質問:今後のフリアーシステムズに期待することはありますか?
回答:やはり我々のような一般の人も導入しやすい低価格化を希望します。私個人の希望としては、640×480の解像力の機種をより低価格で販売していただきたいです。

質問:赤外線カメラを購入する際には他社とは比べましたか?
回答:はい。

質問:赤外線カメラの情報はどこから集めましたか?
回答:主にインターネット上から情報を集めましたが、測定機器ショップに行って質問したりもしました。

佐々木さん、本日はお忙しい中ありがとうございました。
佐々木さんが頂きました、その他の画像になります。

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演奏中の様子

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佐々木氏

「ケースの内部の温度上昇実験」というレポートも掲載しましたので是非ご覧ください。
http://www.sasakivn.com/werkstatt/report/gewaetuistemp.html

佐々木ヴァイオリン製作工房のホームページはこちら
www.sasakivn.com